「たとえばさ、明日この世がなくなっちまうとして、最期になに食べたい?」

レックはときどき本当にばか者のようなことを言う。テリーはため息をついた。
「その質問の意図はなんなんだ」と彼は面倒そうに返事した。
「いいじゃん、好奇心だよ。よくある質問だろ」
ねーよ。そもそも明日死ぬのにモノが喉通るかよ。
きっと以前のテリーならそう答えたことだろう。しかし最近では彼も、いわゆる仲間内の軽い会話というものに慣れてきたので、真面目に返しても仕方がないことは理解できた。正直なところそんなお喋りに興味はないのだ。ちぇ、察しろよ。ほかの仲間は多少なりとも遠慮して、あんまり下らないハナシなら彼に振ってきやしないというのに。それとも、これこそ人望を得るリーダーの資質だとでもいうのか。テリーには解らない。

「お前なら?」
テリーは投げやりに訊き返した。もちろん、これっぽっちも知りたかない。
「……さあ、」とレックは首をかしげた。「考えたことないな、そう言われてみたら」
「ばかにしてんのか」
レックは笑った。
「ごめんごめん。でもそうだな、明日死ぬなら食事する気にはならないかなあ、オレだったら」