テリーは妙に魔物に懐かれる。

彼がオレたちの仲間になってからこっち、たまに魔物がパーティについて来るようになった。
「青い人間」を心から敬愛するバトルレックスは言わずもがな、いつのまにかホイミスライムとぶちスライムとスライムナイトとキングスライムが仲間に加わった。それが、みんなこぞってテリーにくっつきにいく。正直に言いますけど、細っちいくせにバトルマスターだなんて、明らかに職業選択まちがってんだろと思わざるを得ない――この魔物使いめ。

今だってほら。ここで三十分休憩、って指示したんだけど。それで馬車から出てくるやいなや、テリーはキングスライムに飛びつかれて、というか体当たりされて尻もちをついた。のしかかったキングスライムをはね飛ばしてイテテと立ち上がり、その隙に後ろから首筋に巻きついてきたホイミスライムの触手を引き剥がして二度とやんな!と怒鳴りつけ、横で順番待ち(テリーの)していたバトルレックスには、お前は戦ってたんだからちゃんと休憩してろと注意し、そのさらに後ろで順番待ち(テリーの)してたスライムナイトの姿には気付かずに、ようやっとこっちまで来ると、休憩が終わったら自分を馬車から出せとオレに要求した。頭の上にはぶちスライムが乗っかっている。

「もてるなあ、魔物に」
からかったんじゃなくて、真面目にそう言った。
「いらないっての。……ほら降りろ、ぶちすけ」
テリーが首を横に傾けたのでぶちスライムは滑り落ちた。そのまま足元でぴょんぴょん跳ねている。
「こいつらテリーのなにが好きなんだろう。ニオイかな」
「……誰がにおい袋だ」
テリーはムッとした。
「そんな意味じゃないよ。もっとこう、――」

でもそこでテリーの気がよそへ行ってしまったから、会話は続かなかった。
あれ、と言ってぶちスライムの上にかがみこむテリー。
「こいつケガしてるぜ」
ほんとだ。どっかで掠ったんだろか。
「ちゃんと言えよ、ぶちすけ」とテリーは諭した。「お前らのケガって分かりにくいんだから。赤い血が出なくて」
「なんらかのジェル状のものが出るよな」
「気色悪い表現してんじゃねぇよ……ほら、おいで」

そしてテリーは、最近練習してできるようになった、彼の唯一使える呪文であるところのホイミを唱えてやった。だけど得意じゃないからオレの三倍くらい(多分チャモロの五倍くらい)時間がかかったし、しかも一回失敗した。

「よくできました。……回復ならオレがやったげるのに」
「面倒見るのは飼い主の務めだろ」
鼻で笑って、テリーはそう言った。
ホントのところ、まんざらでもないのかも知れない。




おしまい
(ときめき10の瞬間/ひなた様よりお題をお借りしました)